しき……
[#ここで字下げ終わり]
[#地から1字上げ](万葉巻十三)
うらぐはし[#「うらぐはし」に傍線]は、「うるはし」の語原だとの説もあるが、ともかくも、美意識が動いてゐることは事実だが、稍自由である。「花ぐはし桜のめで」「香ぐはし花橘」など言ふ成語に挿まれた「くはし」も褒め詞の様に見えるが、尚考へる余地がある。「くちら」にかゝると見られる「いすくはし」などは、「勇細し」などで解くのは、如何にも固定した方法を思はせる。つまり「やし」「よし」などゝ用語例の似た、「はし」のあつた事が思はれるのである。其が合理化せられて、「細し」の一つの例に這入つてゐるが、かうした「し」は、外にもいろ/\あつたことを考へさせるのである。言換へれば、「やし」「よし」と一類の「はし」があつて、其が偶然、「くはし」と言つた形と結びついた事を思はせるのだ。かう言ふ過程を踏んで、古い組織が、新しい語の組み立て方に、引き直されて行つたものゝ多かつたことが思はれる。
唯此までの「し」で考へられることは、すべて、説明すれば、わり込んで来たものと思はれるものだつた。ところが、日本語の語根時代の俤を見せてゐる、と思はれる
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