や」の用法について、今一応、おなじことをくり返して見たいと思ふ。第一類は、万葉当時既に枕詞としての意識は持たれてゐたに違ひないが、尚単なる用言の連体形の様な感じがある。其について、「や」を附加することによつて、様式上の連体状態を中断し、而も内容において、連体性能に何の変化もなからしめてゐる。と同時に、音律感覚の推移から来る不足感を十分補はしめてゐる。さうしてかう言ふ自然の方法が、新しい連体職能を構成すると共に、枕詞として独立した格の感じを成立せしめようとしてゐるのだ。
第二類になると、句が修飾部の様になつてゐるので、「や」の職能は、更に発達し、文法的機能が漲つて来た様子が見えるのだ。
ところが第三類には、右に言つた用語例の外に、特殊なものゝ加つて来てゐることが見られる。
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A○やすみしゝ我《ワゴ》おほきみの 恐也《カシコキヤ》みはかつかふる山科の鏡の山に……(万葉巻二)
○可之故伎也天のみかどをかけつれば、哭《ネ》のみし泣かゆ。朝宵にして(同巻二十)
○可之古伎夜みことかゞふり、明日ゆりや、かえがいむたねを いむなしにして(同)
B○……海
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