想をとつてゐる。
つまり国造家の負幸物と呪詞とを関聯せしめて言ふのに、「もの」の用語例を換へて来てゐる。つまり唯の枕詞のやうにしたてゝゐるのだ。でも尠くとも枕詞として考へる以上、「じもの」に近い用語例と、「……の」と比喩法を採るのと、二つながら並行した方法なる事と合点は行く。
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朝日の豊さか登りに、神[#(乃)]礼[#(自利)]、臣[#(能)]礼自[#「礼自」に白丸傍点][#(登)]御祷《ミホキ》の神宝献らくと奏す。白玉の[#「白玉の」に傍線]大御白髪いまし、赤玉の[#「赤玉の」に傍線]みあからびいまし、青玉[#「青玉」に傍線]の[#「の」に二重傍線]水江[#「水江」に傍線]の[#「の」に二重傍線]玉の[#「玉の」に傍線]ゆきあひに、……手長《タナガ》の大御世をみはかし広に[#「みはかし広に」に傍線]誅堅《ウチ?》めて、白御馬の[#「白御馬の」に傍線]……踏み堅め……振り立つる事は、耳の[#「耳の」に傍線]いや高に、天下をしろしめさむ事志太米[#「事志太米」に傍線]、白鵠《クヾヒ》の生御調[#(能)]玩物[#(登)]、倭文の大御心も多親《タシ》に、……若水沼にいや……若えまし、すゝぎふるをどみの水の[#「をどみの水の」に傍線]……みをちまし、まそびの大御鏡の面をおしはるして見そなはす事のごとく[#「見そなはす事のごとく」に傍線]、……しろしめさむ事[#(能)]志太米と御祷の神宝を※[#「敬/手」、第3水準1−84−92]げ持ちて、神礼[#(自利)]・臣礼[#(自)]と……
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[#地から1字上げ](出雲国造神賀詞)
呪詞に起原を持つ表現法が、思ひがけない程、多く古代祝詞には相当な数はある。而も其方の「鵜じもの」と、記・紀の側では「しゝじもの」などが目につく位だ。而もある点では、奈良朝の文法の貯溜池と見られる宣命には、同じ「じもの」でも、特殊な用語例が残つてゐるのである。さうして其が、第一類の比喩表現を含む「じもの」と関係なく、第二類に極めて近いことが考へられるのだ。第二類から第一類への過程に、「牀じもの」を据ゑて見れば、稍解釈がつきさうに思はれる。我々は成立した形容詞活用に左右せられることなしに、其以前の形を考へるつもりで、まづ見てゆく必要がある。
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○朕《ワ》が臣としてつかへ奉る
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