女の誕生が、それであつて、此みあれ[#「みあれ」に傍線]があつたのち、更にみあれ[#「みあれ」に傍線]があることが、即、帝位に即かれる意味に外ならないのである。つまり、天子になられる貴人には、二回のみあれ[#「みあれ」に傍線]が必要であるといふ事になる。
日本の古い時代の御産の形式をみると、水と火との二つの方式がある。其古い形式の一部は、今もなほ沖縄の伝承に残つてゐる。神代紀のこのはなさくやひめの命[#「このはなさくやひめの命」に傍線]、垂仁紀の狭穂姫《サホヒメ》皇后の産事は、それ/″\火の形式によるものであり、いま一つの水の形式になると、後世の御産の典型的になつてゐる。とよたまひめの命[#「とよたまひめの命」に傍線]がうがやふきあへずの尊[#「うがやふきあへずの尊」に傍線]を御産みになつた場合、或は反正天皇のみあれ[#「みあれ」に傍線]の際に於ける形が、水辺或は水の御産の形式として、顕著な例である。此側から考へると、垂仁紀のほむちわけの命[#「ほむちわけの命」に傍線]は、火産・水産の調和したものである。出雲風土記のあぢすきたかひこの命[#「あぢすきたかひこの命」に傍線]の伝説は、皇族
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