]の系統には布でないものもあつたのである。植物の枝や、食物までも使はれた。
植物の枝は着物同様、屍を蔽ふ為に投げかけられたのである。其が花の枝に替つた地方もある。此が柴立て場・花折り阪などの起りである。沖縄の国頭郡にある二个処の恥蔽阪《ハヂオソヒビラ》の伝説は、明らかに其を説明して居る。恥処《ハヂ》を蔽《オソ》ふ為ばかりでなく、屍を完全に掩ふために、柴を与へて通つたのが、後世特定の場処に、柴や花をたむける風に固定したのである。
食物としては、米が多く用ゐられて居るけれども、菓物を投げ与へる事もあつたらしい。桃の実や、櫛・縵の化成した筍・野葡萄の類が悪霊を逐うた神話などは、或種の植物に呪力があると見る以外に、精霊を満悦せしめる食物としての意味を、考へに入れて見ねばならぬ。散飯《サバ》を呪力あるものとしてばかり考へてゐるが、やはり食物としてゞある。大殿祭にもぬさ[#「ぬさ」に傍線]と米とがうち撒かれるのは、宮殿の精霊に与へるのが本意で、呪力を考へるのは、後の事であらう。すべての精霊のたむけ[#「たむけ」に傍線]にはぬさ[#「ぬさ」に傍線]と米とを与へる様になつた。其も亦、我々の想像を超越し
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