稲むらの蔭にて
折口信夫

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)言霊《コトダマ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一旦|標山《シメヤマ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「饋」の「貴」に代えて「氣」、第4水準2−92−67]羊

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)まち/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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河内瓢箪山へ辻占問ひに往く人は、堤の下や稲むらの蔭に潜んで、道行く人の言ひ棄てる言草に籠る、百千の言霊《コトダマ》を読まうとする。人を待ち構へ、遣り過し、或は立ち聴くに恰好な、木立ちや土手の無い平野に散在する稲むらの蔭は、限り無き歴史の視野を、我等の前に開いてくれる。此田畑の畔に立つ稲むらの組み方や大小形状については、地方々々で尠からず相違があるらしいが、此と同時に、此物を呼ぶ名称も亦、至つてまち/\である。
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○すゝき……………………大阪四周の農村・河内
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