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いなぶら………………伊豆田方郡・遠州浜松辺・武蔵野一帯の地
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此だけの貧弱な材料からでも、総括することのできるのは、各地の称呼の中には sus, nih 又は hot の語根を含むものゝ、最著しいことである。ほと[#「ほと」に傍線]は、即ほづみ[#「ほづみ」に傍線]のみ[#「み」に傍線]を落したものと見ることが出来る。
私どもの考へでは、今が稲むら生活の零落の底では無いか、と思はれる。雪国ならともかくも、場処ふさげの藁を納屋に蔵ひ込むよりは、凡、入用の分だけを取り入れた残りは、田の畔に積んで置くといふ、単に、都合上から始まつた風習に過ぎぬものと見くびられ、野鼠の隠れ里を供給するに甘んじてゐる様に見える。告朔の※[#「饋」の「貴」に代えて「氣」、第4水準2−92−67]羊は、何れは亡びて行くべき宿世を負うて居る。而も、古くして尚、痕を曳くのは、本の意の忘却せられて後、新しい利用の逋《ニ》げ路を開くゆとり[#「ゆとり」に傍点]のあるものであつた為である。
蓋、水口祭《ミナクチマツ》りに招ぎ降した田の神は、秋の収穫の後、復更に、此を喚び迎へこれま
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