オホス》と、御名の伝への、聊かの差よりまぎれて、二柱にはなれるものなり。かの億計天皇の御名、大脚《オホシ》とも、大為《オホス》ともある例をも思ふべし。されば、(中略)此記に、大酢別の無きも宜なり。」と説明してある。これも、参考すべき事である。
万葉十一に、「山しろの泉の小すげ凡浪《オシナミ》に妹が心をわがおもはなくに」とある凡の字は、また、おほ[#「おほ」に傍線]ともよんで居る。「凡有者《オホナラバ》かもかくもせむをかしこみとふりたき袖をしのびたるかも」など、あるのから見ても、凡河内が大河内となるのが、あたりまへで、お・しと、おほ・しの、近い事がわかるではないか。
さうして、また、単に、おし[#「おし」に傍線]の語根お[#「お」に傍線]ばかりを用ゐて居る場合がある。大足彦|忍代《オシロ》別天皇(記に、淤斯呂和気)、忍坂(於佐箇廼おほむろやに、神武紀)の如き。此事は、お・しが他の語につゞく時に、し[#「し」に傍線]を失うたのである、ともいへるが、景行紀に、押別命を忍之別皇子(通釈には、忍足として、やはり、おし[#「おし」に傍線]とよませて居る)と書いてあるところから見ると、お[#「お」に
前へ 次へ
全12ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング