#「まち」に傍線]と言ふのも、其為である。神慮・神命の現れるまでの心をまつ[#「まつ」に傍線]と言ふまち酒[#「まち酒」に傍線]などは、それである。単なる待酒・兆酒ではなかつた。
まつ[#「まつ」に傍線]を原義のまゝで、語根として変化させると、まつる[#「まつる」に傍線]・またす[#「またす」に傍線]と言ふ二つの語が出来た。まつる[#「まつる」に傍線]は神意を宣る事である。そして、神自身宣するのでなく、伝宣する意義であつたらしい。「少御神《スクナミカミ》の、神寿《カムホ》きほきくるほし、豊寿《トヨホ》きほき旋廻《モトホ》し、麻都理許斯御酒《マツリコシミキ》ぞ」(仲哀記)とあるのを見ると、少彦名神が、呪詞神の酒ほかひの詞を、神寿き豊寿きに、ほき乱舞し、ほき旋転あそばされて、宣《マツ》りつゞけて出来た御酒ぞと言ふのか、少彦名のはじめた呪詞を、神人がほき宣《マツ》り続けて、作られた御酒ぞ、ともとれる。どちらにしても、こゝのまつる[#「まつる」に傍線]は、少彦名自身が、自分の呪詞を自ら宣《マツ》られたり、献り来られた御酒だとは言へない。併し、まつる[#「まつる」に傍線]に呪詞を唱へると言ふ義の
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