体言であつて、「分裂物」などの意であるが、かうした言語の成立は、類例が少い。語頭に来る語根体言はあつても、語尾に来るものは珍らしい。
此は、此語が極めて長く、呪詞・叙事詩の上に伝承せられてゐた事を示してゐるのだ。霊の分裂を持つことは、後代の考へ方では、本霊の持ち主の護りを受ける事になる。其で、恩賚など言ふ字をみたまのふゆ[#「みたまのふゆ」に傍線]と読むやうになり、加護から更に、眷顧を意味する事にもなつた。給ふ・賜はる・みたまたまふ[#「みたまたまふ」に傍線]など言ふ語さへも、霊の分裂の信仰から生れた。みたまのふゆ[#「みたまのふゆ」に傍線]と言ふ語は、鎮魂の呪詞から出たものであらうが、其用途は次第に分岐して行つたらしい。数主並叙法とも言ふべき発想法をしてゐる。
家の祝言が、同時に、家あるじの生命・健康の祝福であり、同時にまた、家財増殖を願ふ事にも当る。時としては、新婚の夫婦の仲の遂げる様、子の生み殖える様に、との希望を予祝する目的にも叶ふのであつた。此みたまのふゆ[#「みたまのふゆ」に傍線]の現れる鎮魂の期間が、ふゆまつり[#「ふゆまつり」に傍線]と考へられたのであらう。そして、ふゆ
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