言ふのも、其久しい時間に対しては叶はないほど、古く岐れた祭りがある。秋祭りである。此も農村では、本祭りと言つた考へで執行せられる。
此秋祭りの分れ出た元は、冬の祭りであつた。だが、冬祭りに二通りあつて、秋祭りと関係深い冬祭りは、寧、やつぱり秋祭りと言つてよいものであつた。真のふゆ[#「ふゆ」に傍線]の語原である冬祭りは、年の窮つた時に行はれたものである。さうして、最古い形になると、春祭りと背なか合せに接してゐた行事らしいのである。だから冬祭りは、春祭りの前提として行はれた儀式が、独立したものと言うてよい。でも時には、秋祭りの意義の冬祭りと、春祭りの条件なる冬祭りとが、一続きの儀礼らしくも見える。さうすると、秋祭りの直後に冬祭りがあり、冬祭りにひき続いて春祭りがあつて、其が、段々間隔を持つ様になつた。其為、祭儀が交錯し、複雑になつて行つたもの、と言へる。
秋祭りを主とする田舎の村々でも、夏祭りを疎かにする処はなかつた。だが、農村の祭りでは、夏は参詣が本位とせられてゐる様で、家族又は一人々々でぼつり/″\と参るのだ。此祭りに、つき物になつてゐるものがある。即、神輿又は長い棒を中心とする鉾・
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