祓へてくれるものであつたので、此も、春待つ夜の行事であつた。其が、市神・山の神の祭りと共に、繰り上げられて、十月の内に行はれる様になつた。山の神の祠の火焼《ホタケ》は、やはり、十一月のお火焼き神事と一つものであつた。
海から来る常世のまれびと[#「まれびと」に傍線]が、やはり海の夷神に還元するまでは、山の神が代つて祓へをとり行うた。これは宮廷の大殿祭《オホトノホガヒ》や大祓へに、山人と認定出来る者の参加する事から知れる。山人は、山の神人であり、山の巫女が山姥となつて、市日には、市に出て舞うた。此が山姥舞である。
大和磯城郡穴師山は、水に縁なく見えるが、長谷川の一源頭で、水に関係が深かつた。穴師|兵主《ヒヤウズ》神は、あちこちに分布したが、皆水に交渉が深い。山人の携へて来るものが、山づと[#「山づと」に傍線]と呼ばれて、市日に里人と交易せられた。山蘰《ヤマカヅラ》として、祓へのしるしになる寄生木《ホヨ》・栢《カヘ》・ひかげ・裏白の葉などがあり、採り物として、けづり花[#「けづり花」に傍線](鶯や粟穂・稗穂・けづりかけ[#「けづりかけ」に傍線]となる)・杖などがあつた。柳田先生の考へによれ
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