朝へかけての行事であるのが、本式であつた。此点、今井武志さんの報告にある、信州上水内の八月六日の夜を以てするのが、古形を存するものゝ様である。沖縄に保存してゐるたなばた[#「たなばた」に傍線]祭りも、やはり七月六日の夜からで、翌朝になるとすんでゐた。
「水の女」の続稿には、既に計画も出来てゐるのであるが、たなばた[#「たなばた」に傍線]といふ言葉は、宛て字どほり棚機であつた。棚は、天《アメ》[#(ノ)]湯河板挙《ユカハタナ》・棚橋・閼伽棚(簀子から、かけ出したもの)の棚で、物からかけ出した作りである。その一種なる地上・床上にかけ出した一種のたな[#「たな」に傍線]ばかりが栄えたので、此原義は、訣りにくゝなつて了うた。たな[#「たな」に傍線]と言へば、上から吊りさげる所謂「間木」と称するもの、とばかり考へられるやうになつた。同行の学者の中にも、或はこの点、やはり隈ない理会のとゞかぬらしく、たな[#「たな」に傍線]を吊り棚とばかり考へてほかくれぬ人もある。
壁に片方づけになつてゐない吊り棚に、年神棚《トシダナ》がある。此は、天井から吊りさげるのが、本式であつた。神又は神に近い生活をする者を
前へ
次へ
全17ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング