を振つてあるいた、ありの儘でもあつた。彼等自身の遣ふ語も、都会的な流行を追うてゐた。我々は今でも、狂言詞の大きな特徴が、どう言ふ生活の中から、おし出されて来たかを見ることが出来る。
狂言詞[#「狂言詞」は太字]
[#ここから2字下げ]
(白蔵主の詞)けふは、思ふ子細あつて、案内を乞うてす[#「す」に白丸傍点]は 「釣狐」以下、三百番本による。
(群衆の詞)皆言ひ合せて、まかり出でてす[#「す」に白丸傍点]は 「薬水」
[#ここで字下げ終わり]
これを直訳すれば、恰も、現代語の「……したことですは」と言ふことになる。併し、「す」は「です」ではない。「……乞ひて[#「て」に二重丸傍点]候[#「候」に白丸傍点]よ」「……罷り出でて[#「て」に二重丸傍点]候[#「候」に白丸傍点]よ」が、正しい逐字訳見たやうな形である。「て」は、現在完了助動詞の連用形につくて[#「て」に傍線]、其についで対話敬語としての「す」が這入つて居り、更に接尾感動語として「は(わ)」が添はつてゐる。而もこの「す」は、明らかに、候が語原である。
にも繋らず、更に一段の古語から出て、中世末まで残つたものゝ様な感じを、人
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