は餓えようとままよ、自分さえ旨ければよいと気が変ってつつき続けの食い続けをやり続けた。さては誰か予を尋ぬる者ありと悟って獏は跡を匿《かく》した。一向|埒《らち》明かずとあってカリブ人、また鼠を遣わすとこやつ小賢《こざか》しく立ち廻ってたちまち獏の居所を見付けたが、獏もさる者、鼠に向いわれと同類の汝がわが食物を得る場を垢《あか》の他人の人間に告げたって、人間ほど薄情な者なければ、トドの詰まりは狡兎《こうと》死して良狗《りょうく》煮らるだ。獏の所在は漠然分りませぬと人を誤魔化し置いて毎日ここへ来てシコ玉食う方が宜《よろ》しいと言うと、鼠たちまちその意に同じカリブ人を欺いて毎日食いに出懸けた。ところが一日鼠が食い余しの穀を口辺に付けたまま眠り居る処へカリブ人が行き遇わせ、揺り醒《さ》ましてかの樹の下へ案内させ、石の斧で数月掛かってその樹を伐り分け、毎人その一片を自分の畑へ栽《う》えてから銘々専食すべきカッサヴァ圃《ほ》が出来た(一八八三年板、イム・ターンの『ギアナ印甸人《インディアン》中生活記』三七九頁)。この鼠のやり方筒井順慶流儀で余り面白くないが、とにかく人に必要な食物の在処《ありか》を
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