りその輩を召して毒殺し、その屍を湖に抛《な》げ入れて安心し酒宴する席へ、夥しい鼠が死体から出て襲来した。王|惧《おそ》れて火で身を囲うと鼠ども火を潜《くぐ》って付け入る。妻子同伴で海中の城に遁《のが》れると鼠また来って食い殺した(ベーリング・グールドの『中世志怪』四五三頁)。チュリンギアで下女一人眠り、朋輩は胡桃《くるみ》を剥《は》ぎいた。見ると眠った者の口から魂が鼠となって這い出し窓外に往った。起せど起きぬから他室へ移した、暫《しばら》くして戻った鼠が下女の体を求めど見えぬ故消え失せた。同時に下女は睡ったまま死んだという(コックスの『民俗学入門』四三頁)。本邦でも『太平記』に見えた頼豪《らいごう》阿闍梨《あじゃり》、『四谷怪談』のお岩など冤魂が鼠に化けたとした。西暦六世紀にバーガンジー王たりしゴンドランが狩りに疲れて小流の側に睡る。侍臣が見て居る内、王の口より小さい獣一疋出て河を渡らんとして能わず。侍臣剣を抜きて流れに架すとそれを歩んで彼方《かなた》の小山の麓《ふもと》の穴に入り少時の後出て剣を踏んで王の口に還り入った。その時王|寤《さ》めて、われ稀代の夢を見た、譬《たと》えば磨いた
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