ぐ事むつかしと感じ駭《おどろ》くという事あり、欧州へ将来する象を見るに藁の中に潜むハツカ鼠を見て狼狽《ろうばい》するが常なり」と載す。かく象が甚《いた》く鼠を嫌う故、大黒が鼠を制伏した体を表わして神威を掲げた事、今日インドで象頭神ガネサが鼠にのる処を画き、昔ギリシアのアポロ神がクリノスより献じた年供《ねんぐ》を盗んだ鼠を射殺したので、その神官が鼠に乗る体を画いたと同意と考う。と書きおわってグベルナチス伯の『動物譚原』二の六八頁を見るに、ガネサは足で鼠を踏み潰すとある故、ますます自見の当れるを知った。古ローマの地獄王后ブロセルビナの面帽は多くの鼠を散らし縫った(一八四五年パリ板、コラン・ド・ブランシーの『妖怪辞彙』三九三頁)。鼠は冬蟄し、この女神も冬は地府に帰るを表わしたのだ。それから推して大黒足下の女神は鼠の精と知れる。されば、増長、広目《こうもく》二天が悪鬼毒竜をふみ、小栗《おぐり》判官《はんがん》、和藤内《わとうない》が悍馬《かんば》猛虎に跨《またが》るごとく、ガネサに模し作られた大黒天は初め鼠を踏み、次に乗る所を像に作られたが、厨神として台所荒しの鼠を制伏するの義は、上述中禅寺の
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