に来者《らいしゃ》なしといわれた美妓で素性は極めて卑しくあたかも三浦屋の高尾が越後の山中、狼と侶を為《な》さんばかりの小舎《こや》に生まれたごとく(『北越雪譜《ほくえつせっぷ》』)、ペオチアの田舎で菜摘みを事としたが、転じてアテーネの遊君となってより高名の士その歓を求むる者引きも切らず、一たび肢を張れば千金到り一たび要《こし》を揺《うご》かせば万宝|納《い》る。かほど金になる女身を受けて空しく石となった松浦佐夜姫《まつらさよひめ》を愍笑《びんしょう》せんばかり。さればアレキサンダー王テーベスを壊《やぶ》った時「アレキサンダー王はこの城壁を砕けり、妓王フリーネはこれを再興せり」と銘するだに許されたる、これを修めて旧観に復せしめんと出願したほどの大金持となった。かつて、弁士エウチアスに重罪犯として訴えられた時、その情夫の一人で大雄弁家なるフペリデースに弁護されしもややもすれば負けそうだった。その時フ一計を案出し、フリーネを唆《そその》かしてその乳房を露《あら》わさしめた。これ昔天孫降下ましましし時、衢神《ちまたのかみ》猿田彦大神長さ七|咫《あた》の高鼻をひこつかせて天《あま》の八達之衢《や
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