文政十一年本多近江守長崎奉行勤務中、その足軽《あしがる》島田|惣之助《そうのすけ》は舞袖事たき十九歳、同じく西村新三郎は歌扇事かね二十歳という娼妓を買いなじみ、たきは夫婦約束、かねは身請けされて親元に在《い》たところ、十二年十月男二人とも出立に付き、たき惣之助を慕い駈落してかねに落ち合い、たきは若衆姿に化けて関所を通り、両人とも江戸へ著いた咎《とが》で奴《やっこ》にされ、惣之助は二十七歳で死刑と天保二年筒井伊賀守役宅で宣告された(『宝暦現来集』二一)。かかる犯罪予防のため関所で少年姿の秘部を検したから「ちょいと捲《まく》り云々」と唄うたものだ。『明月記』に天福元年十一月御法事の夜僧房の童が女の姿で堂上に昇り、大番武士に搦《から》めらるとあり。『書紀』に小碓命《おうすのみこと》少女の装いで川上|梟師《たける》を誅《ちゅう》したと出で、婦女男装して復仇したり、役者が女装して密通したりなど往々聞くが(『拾遺|御伽婢子《おとぎぼうこ》』三の三、『甲子夜話』続二一)、多くはその場だけで事済み、外国のような大騒ぎ社会を害毒するの甚だしきに至らぬ。エジプト等の回教国には婦女閉居して男子を見ず。女客の
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