。今一つ豕に因んだ例を挙げんに、ホーンの『テーブル・ブック』一八六四年版一九〇頁にいわく、数年前エールス人ダヴッド・ロイドが、ヒャーフォードで、六脚ある牝豕をその一膳飯店に飼ったからたまらない。見物かたがた飲食に出掛ける人|引《ひき》も切らずと来た。ところが、ダヴッドの妻、怪しかる飲んだくれでしばしばなぐっても悛《あらた》まる気遣いなし。一日例のごとく聞《きこ》し召し過ぎ、例の打擲《ちょうちゃく》がうるさいから檻《おり》の戸を開けて六脚の豕を出してその跡に治まり返る。折節《おりふし》一群の顧客噂に高い奇畜を見に来り、ダヴッド大恐悦の余り何の気も付かず欄辺に案内し、皆さんこれまでこんな活き物を御覧にならないでしょうというと、かみさんが大の字になってグウグウと高鼾《たかいびき》の体《てい》、観者の内の一百姓「ホンに貴公のこの牝豕ほど酔うたのは生来一度も見ない」といった。それからダヴッドの牝豕ほどずぶ酔いてふ俚言が起ったと。これも何だか跡から牽強《けんきょう》のよう想《おも》わる。
 馬琴の『蓑笠両談』二に、丸山応挙に臥猪《ふしい》の画を乞う者あり。応挙いまだ野猪の臥したるを見ず心にこれを想
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