ち猴の真似をした。下女どもはそれは何の所作事《しょさごと》かと尋ぬると、われは人間のゴリラであると飛んでもない言を吐いたから、下女ども大いに驚き用心して爾来|碌《ろく》に近寄らず。高橋は何の気も付かず、二、三日は下女|輩《ら》多忙で自分に構ってくれぬ事と思いいたが、幾日立っても至極の無挨拶なるに業をにやし、烈火のごとく憤って男爵夫人に痰呵《たんか》を切り、汝はわれと同国人なるに色を以て外人の妻となりたるを鼻に掛け、万里の孤客たるわれを軽んずるより下女までも悪態を尽すと悪態極まる言を吐いたので大騒ぎとなり、男爵大いに怒ってその朝限り高橋をお払い箱にした。それから全くの浪人となって旦《あした》に暮を料《はか》らずという体だったが、奇態に記憶のよい男で、見る見る会話が巧《うま》くなり、古道具屋の賽取《さいと》りしてどうやらこうやら糊口《ここう》し得たところが生来の疳癪《かんしゃく》持ちで、何か思う通りにならぬ時は一夕たちまち数月掛かって儲けた金を討ち死にと称して飲んでしまう。一度ならよいが幾度も幾度も討ち死にをするのでどうしても頭が昂《あが》らず、全く落城し切って大阪の山中氏がロンドンに出し
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