国王者の珍羞たり。化学分析をやって見るに著しく燐を含めりとか。壮陽の説も丸啌《まるうそ》でないらしい。したがって尾閭禁ぜず滄海《そうかい》竭《つ》きた齶蠅《がくよう》連は更なり、いまだ二葉の若衆より※[#「囗<睛のつくり」、第3水準1−15−33]《かわや》に杖つくじいさんまでも、名を一戦の門に留めんと志す輩《やから》、皆争うてこれを求めたので、トルーフルを崇重する余りこれを神の子と称えた碩学《せきがく》すらある。これその強補の神効を讃えたに出づるはもちろんなれど、また一つはこの物土中に生ずるを不思議がる余り雷の産む所としたにもよる。支那でも地下にある多孔菌一種の未熟品を霹靂《へきれき》物を撃って精気の化する所と信じ雷丸雷矢すなわち雷の糞と名づけ、小児の百病を除き熱をさます名薬とした。ただし久しく服すれば人を陰痿《いんい》せしむとあるからトルーフルの正反対で、現今の様子ではこっちを奨励せにゃならぬかも知れぬ。(一八九二年パリ版、シャタン著『ラ・トルフ』。エングレルおよびプラントンの『植物自然分科』一輯一巻二八六―七頁。『大英百科全書』十一版二七巻三二二頁。『本草綱目』三七。ブラントーム
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