おぎ》を伐る。犬暫く渚に出次す、隆大蛇に身を巻かる、犬還って蛇を咋い殺す。隆|僵《たお》れて知るところなし、犬|※[#「彳+旁」、241−16]徨涕泣《ほうこうていきゅう》走って船に還りまた草中に反《かえ》る。同伴怪しみ随い往き隆の悶絶せるを見、将《ひき》いて家に帰る。二日の間犬ために食わず、隆、蘇りてすなわち始めて飯を進む、隆愛惜親戚に同じ(『淵鑑類函』四三六)。『今昔物語』二九に、陸奥《むつ》の賤民数の狗《いぬ》を具して山に入り大木の洞中に夜を過す、夜更けて狗ども皆伏せたが、年来飼った勝《すぐ》れて賢い狗一つ急に起きて主に向って吠えやまず、後には踊り掛かって吠ゆ。太刀抜きて威《おど》せどいよいよ吠え掛かる、こんな狭い処で咋い付かれてはと思うて外へ飛び出る時、その狗主人がいた洞の上方に踊り上り物に咋い付く、さては我を咋《か》むとて吠えたでないと知って見ると洞の上から重き物落ちる。長《たけ》二丈余太さ六、七寸ばかりの蛇が頭を狗に咋われて落ちたのだった。さては我命を救うたこの犬は無上の財宝と知って狗を伴れて家に帰った。その時狗を殺したら狗も自分も犬死にすべきところじゃったとある。
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