べて人間は全くの啌《うそ》はなく、インドのモンネース獣は帽蛇《コブラ》と闘うに、ある草を以てその毒を制し、これを殺すという。それから鼬が芸香《るうだ》を以てバシリスクを平らげるといい出したのだ。また深い穴に毎《いつ》も毒ガス充《み》ちいて入り来る人を殺す。それを不思議がる余り、バシリスクの所為と信じたのだと説いたは道理ありというべし。一八六五年板、シーフィールドの『夢の文献および奇事』二巻附録夢占字典にいわく、女がバシリスクを産むと男が夢みればその男に不吉だが、女がかかる夢を見れば大吉で、その女富み栄え衆人に愛され為《な》すところ成就せざるなしと。
 十六世紀のバイエルン人、ウルリッヒ・シュミットの『ラプラタ征服記』のドミンゲズの英訳四三頁に当時のドイツ人信じたは、※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]《わに》の息《いき》人に掛かれば人必ず死す。また、※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]、井中にあるを殺すには、鏡を示して自らその顔の獰悪《どうあく》なるに懼《おそ》れ死にせしむるほかの手なしと。されど我自ら三千以上の※[#「魚+王の中
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