一由旬の長さに及び、花さき、実る。王自ら種え試みるに、芽も花も生ぜず、大いに怒って諸臣をしてかの人|種《う》えたる樹を斫《き》らしむるに、一樹を断てば十二樹を生じ、十二樹を切れば二十四樹を生じ、茎葉花果皆七宝なり。爾時《そのとき》二十四樹変じて、二十四億の鶏鳥、金の嘴、七宝の羽翼なるを生ずという。これもインドで古く金宝もて鶏の像を造る習俗があったらしい。『大清一統志』三〇五、雲南《うんなん》に、金馬、碧鶏二山あり。『漢書』に宣帝神爵と改元した時、あるいは言う、益州に、金馬、碧鶏の神あり。※[#「酉+焦」、第4水準2−90−41]祭《しょうさい》して致すべしと。ここにおいて諫大夫|王褒《おうほう》を遣わし、節を持ってこれを求めしむと。註に曰く、金形馬に似、碧形鶏に似ると。これも金で馬、碧すなわち紺青《こんじょう》で鶏を作り、神と崇《あが》めいたのであろう。本邦にも古く太陽崇拝に聯絡して黄金で鶏を作り祀りしを、後には宝として蔵する風があったらしい。十一年前、余、紀州日高郡上山路村で聞いたは、近村竜神村大字竜神は、古来温泉で著名だが、上に述べた阿波の濁りが淵同様の伝説あり。所の者は秘して語ら
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