》子珍と同族で、同地生まれの王仲祥という人来合せ、まず先生に謁し、次ぎに子珍の宿に止まり、李玄石を見、翌日別れに臨み、子珍に、汝の友玄石は鬼《き》だ、生きた人でないと告げると、子珍、玄石はこれ上聖の聖で、経書該博ならざるなく、辺先生すらこれを推歎す、何ぞこれを人でないと言うべきと答えた。仲祥、我は才芸を論ずるでない、確かに彼を鬼と知って言うのだ。汝もし信ぜずば今夜新しい葉を席《むしろ》の下に鋪《し》いて、別々に臥して見よ、明朝に至り汝の榻下《とうか》の葉は実するも、鬼の臥所《ふしど》の葉は虚《むな》しかるべしと言うて別れ出た。夜に及んで仲祥の言に従い試みると、暁に及び果してその通りだったから、翌日玄石に、君は鬼だという噂《うわさ》がある、本当かと問うと、玄石、誠に我は鬼だ、この事は仲祥から聞いただろう、我冥司に挙用されて、泰山の主簿たらんとするも、学薄うして該通ならず。冥王の勧めに従い、辺先生に業を求めんとするに人間が我を懼《おそ》るるを憚り、人に化して汝と同師に事《つか》え、一年を経ずして学問既に成り、泰山主簿に任じて二年になるが、兄弟分たる汝と別るるに忍びず、眷恋《けんれん》相伴う
前へ
次へ
全150ページ中42ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング