小野篁《おののたかむら》などこの世と地獄を懸け持ちで勤務した例もあり、せせこましい官吏どもに正六位の勲百等のと虚号をやったって何の役に立たず、恐敬もされぬから、大抵人民を苦しめた上は神をすら濫造黜陟する御威勢で、それぞれ地獄の官職に栄転させ、中国で貨幣を画《えが》き焼いて冥府へ届くるごとく、附け木へ六道銭を描いて月給に遣わすべしだ。それから今一つよい税源は、余が大正二年八月十四日の『不二新聞』へ書いた通り十四世紀のエジプト王ナーシルは、難渋な財政を救うべく、毎《つね》に女官をして高位の婦女の隠事を検せしめ、不貞税というやつを重く取り立てた。同世紀に文化を誇った仏国にも、ロア・デ・リボー(淫猥《いんわい》王)わが邦中古|傀儡《くぐつ》の長吏様の親方が所々にあって本夫《ほんぷ》外の男と親しむ女人より金五片ずつの税を徴した(ミュアーの『埃及《エジプト》奴隷王朝史』八三頁、ジュフールの『売靨史《ばいようし》』四巻二四頁)。現今わが邦男女不貞の行い夥しく、生温《なまぬる》い訓誡や、説法ではやむべくもあらざれば、すべからくこれに禁止税を掛くるべく、うるさく附け纒《まと》われて程の知れぬ口留め料を警
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