順し一切殺生せず。ただ飲食便利衰老の煩を免るる能わず。香美の稲ありて一度|種《う》うれば七度収穫され、百味具足し口に入ればたちまち消化す。大小便の時地裂け赤蓮花を生じて穢気を蔽《おお》うとあるから、そんな結構な時代の人もやはり臭い糞は垂れるのだ。人民老ゆれば自然に樹下に往き、念仏して静かに往生し、大梵天や諸仏の前に生まる。その時の聖王に子千人と四大宝蔵あって中に珍宝満つ。衆人これを見て貪著《とんじゃく》せず、釈迦仏の時昔の衆生この宝のために相《あい》偸劫《とうごう》して罪を造ったと各|呆《あき》れる。その時弥勒仏生まれて成道《じょうどう》し、件《くだん》の聖王その悴《せがれ》九百九十九人と弟子となって出家し一子のみ出家せずに王位を嗣《つ》ぐ。弥勒世尊、翅頭末《しとうまつ》城外《じょうがい》の金剛荘厳道場《こんごうしょうごんどうじょう》竜華菩提樹下《りゅうげぼだいじゅげ》で成道する。この樹は枝が宝竜のごとく百の宝華《ほうげ》を吐く故この名あり。初めに金剛座上で説法し九十六億人阿羅漢を得、二会と三会に城外の華林園で説法し、九十四億と九十二億の人が阿羅漢となる。これを竜華の三会といって馬琴の
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