の出来た貞享五年頃、またはその前に世に言い囃《はや》し、当時諺となって人口に膾炙《かいしゃ》したものであるまいか。故にこの茶の十徳というは鶏や猫の五徳と事異なり、十倍の利得るといったまでの事で、この徳あの徳と一々名目を列ねたものでなかろうと土宜師へ答え置いたが、どうも自分ながら胡麻《ごま》の匂いがする。識者の高教を仰ぐ。
 右に引いた『韓詩外伝』の文で分る通り、鶏の五徳は雄鶏に限った事で、牝鶏に至っては古来支那で面白からぬ噂あり。牝鶏の晨《しん》するを女が威強くなる兆《きざし》として太《いた》く忌んだが、近頃かの邦《くに》の女権なかなか盛んな様子故、牝鶏が時作っても怪しまれぬだろう。英国でも女に制せらるる骨なし男をヘン・ベックト、牝鶏に啄《つつ》かるるという。グベルナチスいわく、イタリア、ドイツおよびロシアに広く信ぜらるるは牝鶏が牡鶏同然に鳴く時は大凶兆たり。これを聞いた者自分の死を欲せずんば即座にこれを殺すべしと。ペルシャでは牡鶏よく悪鬼を殺すとて墓所にこれを放ち飼いにす。ただし牝鶏の晨するを忌む。論士サッダーこれを駁して牝鶏の晨するものは牡鶏同様魔を殺すの功あろうから殺すべからずと
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