それについてまた可笑しきはボカチオの『イル・デカメロン』に、僧が主人に対してアリストテレスは賢人の七徳とかを述べたが、わが従僕また七徳ありとてその過失を指折り数え立てるところがある。英国の弁護士で『デカメロン』の諸話の起因と類譚を著わしたエー・コリングウッド・リー氏が出板《しゅっぱん》前に書を飛ばして、予が知っただけの事を洩《も》らしくれ編入したいからと言うて来たので、多少書き送った内に、この譚の類話として鶏と猫の五徳を書き送ったが、従僕の七徳として実はその七徳を嘲《あざけ》った譚は読んだ事なしというて来た。一生をこの一書に厮殺《しさつ》したリー氏ですらこの書の内にある事を知り及ばない。だから馬琴の口吻《こうふん》で書を読む事誠に難くもあるかなだ。而《しか》していわんやまたザラに世上に跋扈《ばっこ》する道で聞き塗《みち》に説く輩においてをやだ。それから人は冗談は言わぬもので、往年予、土宜法竜師に分らぬ事あればチト何でも聴きにこいとか言ったのを忘れぬと見え、四年前に仁和寺《にんなじ》御室から叮嚀な封状が届いたのでギョッとしたが、相手が出家ゆえ金の催促でもあるまいと妻子の手前|徐《おもむろ
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