さて羅摩王久しぶりで恋女房を難苦中より救い出し、伴うて帰国した後、一夜微服して城内を歩くと、ある洗濯師の家で夫妻詈り合う。亭主妻に向いわれは一度でも他男に穢《けが》された妻を家に置かぬ、薄のろい羅摩王と大違いだぞと言うた。その声|霹靂《へきれき》のごとく羅摩の胸に答え、急ぎ王宮に還って太《いた》く怒り悲しみ、直ちに弟ラクシュマナを召し私陀を林中で殺さしむ。ラクシュマナ、その嫂《あによめ》の懐胎して臨月なるを憐み、左思右考するに、その林に切れば血色の汁を出す樹あり、因ってその汁を箭《や》に塗り、私陀を林中に棄て、帰って血塗りの箭を兄王に示し、既に嫂を射殺したと告げた。私陀林中にさまよい声を放って泣く時、その近処に隠棲せるヴァルミキ仙人来って仔細を聞き、大いにその不幸に同情し、慰めてその庵へ安置し介抱すると、数日にして二子を生み、仙人これを自分の子のごとく愛育した、ほどへて羅摩ヤグナムの大牲《おおにえ》を行わんとす。これは『詩経』に※[#「馬+辛」、第3水準1−94−12]牡《せいぼう》既に備うとあり『史記』に秦襄公|※[#「馬+留」、第3水準1−94−16]駒《りゅうく》を以て白帝を祀《
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