てまた活く〉(『本草綱目』五一)てふ記載に合い、昼|臥《ふ》し夜飛び廻る上に、至って死にがたい誠に怪しいもの故種々の虚談も支那書に載せられたのだ。さて仙人能く飛ぶに合せてその脳を食えば長生すとか、その杖を得れば欲するところ意のごとしとかいい出し、支那人は中風大風(癩病)等を風より起ると見たから、風狸の一名あるこの獣の尿は諸風を治すと信じたのだ。昨今支那にコルゴを産すと聞かぬが、前述の仰鼻猴や、韓愈の文で名高い※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]《わに》など、ありそうもない物が新しく支那で見出されて学者を驚倒させた例多く、支那の生物はまだとくと調査が済まない。したがって予は南支那に一種のコルゴが現存するか、昔棲んだかの証拠がそのうち必ず揚がると確信する。さて話はこれから段々いよいよ面白くなるんだからして、聞きねえ。[#地から2字上げ](大正九年一月、『太陽』二六ノ一)

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『仏本行集経』三三に、仏、成道《じょうどう》して最初に説法すべき人を念じ、優陀摩子《うだまし》然《しか》るべしと惟《おも》うに、一天神来りて彼は七日前に死んだと告ぐ。世尊内
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