に黒いが後に雌が変色するより変成女子と信じたり、『列子』、〈※[#「豸+兪」、41−1]《ゆ》変じて※[#「けものへん+爰」、第3水準1−87−78]と為る〉、『荘子』、〈※[#「けものへん+嬪のつくり」、第4水準2−80−54]狙《ひんそ》※[#「けものへん+爰」、第3水準1−87−78]を以て雌と為る〉と雌雄を異種に見立てたのだ。猿は臂長く膂力《りょりょく》に富み樹枝を揺《ゆす》って強く弾《はじ》かせ飛び廻る。学者これを鳥中の燕に比したほど軽捷《けいしょう》で、『呂覧』に養由基《ようゆうき》矢を放たざるに、※[#「けものへん+爰」、第3水準1−87−78]、樹を擁して号《さけ》び、『呉越春秋』に越処女が杖を挙げて白※[#「けものへん+爰」、第3水準1−87−78]に打ち中《あ》てたなどあるは、その妙技なみ大抵の事でない絶好の叙述と知れ、予も親しく聴いたが、猿が飛ぶ時ホーホーと叫ぶ声は大したもので耳が病み出す。寂しい処で通宵《つうしょう》これを聴く趣はとてもわが邦の猴鳴の及ぶところでなく、〈峡中猿鳴く至って清し、諸山谷その響きを伝え、冷々として絶えず、行者これを歌いて曰く、巴東三峡猿
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