わ》しとした。第八図は野干(ジャッカル)頭の神アヌビスと鷹頭の死人の守護神が、死人の業《ごう》を秤《はか》る衡《はかり》の上に狗頭猴が坐し、法律の印したる鳥羽と死人の心臓が同じ重さなるを確かめてこれを親分のトットに報ずるところだ。さて衆神の書記たるトットがこれを諸神に告げるのだ。また第九図のごとく豕《いのこ》に像《かたど》った悪人の魂を舟に載せて、もう一度苦労すべく娑婆《しゃば》へ送還する画もある。またこの猴を月神の使者としその社に飼った。その屍は丁寧にミイラに仕上げて特設の猴墓所に葬った。けだしバッジの『埃及《エジプト》人の諸神』一巻二一頁に言えるごとく、狗頭猴のこの種は至って怜悧で、今も土人はこれを諸生物中最も智慧あり、その狡黠《こうかつ》を遥かに人間を駕するものとして敬重す。古エジプト人これを飼い教えて無花果《いちじく》を集めしめたが、今はカイロの町々で太鼓に合わせて踊らされ、少しく間違えば用捨なく笞《むち》うたるるは、かつて文字の神の権化《ごんげ》として崇拝されたに比較して猴も今昔の歎に堪えぬじゃろとウィルキンソンは言うた(『古埃及人の習俗)』巻三)。またいわく、アビシニアの南
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