《しょうしゅう》で相公てふ者と心やすくなり、その室に至って柱上に一小猴を鎖でつなげるを見るに狡猾《こうかつ》らしい。縦《はな》して席間に周旋せしめ、番語で申し付くると俄に一|楪《はち》を捧げ至る、また番語で詈れば一碗を易《か》えて来る、驚いて問うと答えて、某《それがし》に婢《ひ》あり、子を生んだが弥月《びげつ》にして死んだ。時にこの猴生まれて十五日、その母犬に殺され終日泣きやまず、因ってこの婢に乳養せしむると、長じて能く人の指使に随い兼ねて番語を解するというた。その後清州に至って呉同知|方《かた》に留まる、たちまち客一猴を携えて城に入るありと報ず。呉、杜に語りて、この人は江湖の巨盗だ、すべて人家に至って様子を窺い置き、夜に至って猴を入れて窃《ぬす》ます、而して彼は外にあって応援す。われ必ずこの猴を奪い人のために害を除かんと言うた。明日その客(すなわち相公)呉に謁す、呉飯を食わせ、その猴を求めしに諾せず、呉曰く、くれずばその首を切ろうと、客|詮方《せんかた》なく猴を与え、呉、白金十両を酬《むく》う。去るに臨んで番語で猴に言い付ける、たまたま訳史聞き得て来って呉に告げたは、客、猴に教えて汝
前へ
次へ
全159ページ中111ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング