示すと、あるいは喜んで注視しあるいは妬《ねた》んで騒ぐを毎度|睹《み》た。『十誦律』一に〈仏舎衛国にあり、爾時《そのとき》※[#「りっしんべん+喬」、第3水準1−84−61]薩羅《きょうさら》国に一比丘あり、独り林中に住す、雌※[#「けものへん+彌」、第3水準1−87−82]猴あり常にしばしばこの比丘の所に来往す、比丘すなわち飲食を与えてこれを誘う、※[#「けものへん+彌」、第3水準1−87−82]猴心軟し、すなわち共に婬を行う、この比丘多く知識あり、来りて相問訊して一面にありて坐す、時に※[#「けものへん+彌」、第3水準1−87−82]猴来りて婬を行わんと欲し、一々諸比丘の面を看る、次に愛するところの比丘の前に到り、住《とど》まりてその面を諦視し、時にこの比丘心恥じ※[#「けものへん+彌」、第3水準1−87−82]猴を視ず、※[#「けものへん+彌」、第3水準1−87−82]猴|尋《つ》いで瞋り、その耳鼻を攫し、傷破してすなわち去る、この比丘波羅夷を得、まさに共に住すべからず〉、巻五五に、仏|毘舎離《びしゃり》にあった時、一比丘毎度余食を雌猴に与うると〈ついにすなわち親近し、東西を随逐し、乃至手捉して去らず、時に比丘すなわち共に不浄を行う、時に衆多の比丘房舎の臥具を案行し、次にかの林中に至り、かの※[#「けものへん+彌」、第3水準1−87−82]猴来りて諸比丘の前にありて住し尾を挙げて相似を現わす、諸比丘、かくのごとき念を作す、この雌※[#「けものへん+彌」、第3水準1−87−82]猴今我らの前にありて、相を現ずることかくのごとし、はた余比丘のこの※[#「けものへん+彌」、第3水準1−87−82]猴を犯すあるなしか、すなわち隠れて屏処にありてこれを伺う、時に乞食比丘食を得て林中に還り、食しおわりて持して※[#「けものへん+彌」、第3水準1−87−82]猴に与う、※[#「けものへん+彌」、第3水準1−87−82]猴食しおわりて共に不浄を行う、かの諸比丘観見して、すなわち語《い》いていわく長老、仏比丘を制して不浄を行うを得ざるにあらずや、彼答えて言う、仏人の女を制して、畜生を制せず、時に諸比丘仏の所に往き云々〉、仏これを波羅夷罪《はらいざい》と断じた。この通り牝猴時として慾火|熾《さか》んに人前に醜を露わす事もあるべく、それらの事より山神女性で男子の自涜を好むといい出し
前へ
次へ
全80ページ中70ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング