間に選別《えりわけ》しむるに倣って、万屋《よろずや》の長が、姫に七所の釜の火を断えず焚《た》かせ、遠方より七桶の水を汲ませ、七種の買物を調えしむと筆し、上述ジオメデスの人食馬を人秣食う鬼鹿毛とし、壮士トレポレムス賊と偽って賊※[#「穴かんむり/果」、第3水準1−89−51]《ぞくか》に入り、そこに囚われいる情女カリテを娼妓に売れと勧むると、照天娼家に事《つか》うると、またトが毒酒で群賊を眠らすのと、さて女を驢に載せて脱れ遂ぐるのとが、偶然また反対ながら、横山が小栗の郎従を酔殺すのと、判官鬼鹿毛に乗って遁げおおせるのとに近似しいる。もっとも小栗の話の大要は、『鎌倉大草紙』に載せた事実に本《もと》づき、むやみに改むる訳にも往かぬところから、『金驢篇』の模倣はほんのそこここに止まる。それから俗に小栗の碁盤の曲乗りなど伝うるに似た事は、前項でインドの智馬が蓮花を蹈んで行《ある》いたのと、広嗣の駿馬が四足を合せて、一の杭《くい》の頂に立ったのとだ。躑躅《つつじ》と同科のアセミまたアセボを『万葉集』に馬酔木《あせみ》と書き、馬その葉を食えば酔死すという。「取つなげ玉田横野の放れ駒、つゝじの下に馬酔
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