さんとすれども出る事なし。寸々《ずたずた》に引き切っても、首はなお残りて腹に入りついに人を殺す(とはよくよく尻穴に執心深い奴で、水に棲むてふ弁《ことわ》りがないばかり、黒井将軍が報《しら》されたトウシ蛇たる事疑いを容れず)。これを引き出すに「猿のしかけ」という木の葉にて捲き引き出せば、わずかに尾ばかり差し出たるにても引き出すといえり云々と、『松屋筆記』五三に出づ。

     蛇の変化

 これに関する話は数え切れぬほど多いからほんの言い訳までに少々例を挙ぐる。『和漢三才図会』に「ある人船に乗り琵湖を過ぎ北浜に著く、少頃《しばし》納涼の時、尺ばかりの小蛇あり、游ぎ来り蘆梢に上り廻り舞う、下り水上を游ぐこと十歩ばかり、また還り蘆梢に上る初めのごとし、数次ようやく長丈ばかりと為る、けだしこれ升天行法か、ここにおいて黒雲|掩《おお》い闇夜のごとし、白雨《はくう》降り車軸の似《ごと》し、竜天に升《のぼ》りわずかに尾見ゆ、ついに太虚に入りて晴天と為る」。誰も知るごとく、新井白石が河村随軒の婿《むこ》に望まれた折、かようの行法に失敗して刃に死んだ未成の竜の譚を引いて断わった。支那には『述異記』に、
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