ただし既に述べ置いた通り、美術としては絵嘘事《えそらごと》も決して排すべきにあらねど、ここにはただかかる行動を為《な》す蛇は実際ないてふ小説を受け売りし置く。
 予の宅に白蛇棲んでしばしば形を現わすが、この夏二階の格子の間にその皮を脱ぎしを見付け引き出そうとすれど出ず。それは只今言った通り蛇の腹の多数の麟板の後端が格子の木の外面にある些細な凸起に鈎《かか》り着いて、蛻《ぬけがら》を損せずに尾を持って引き出し得ぬと判り、格子の外なりし頭を手に入れその方へ引くと苦もなく皮を全くし獲れた。無心の蛻すらかくのごとくだから、活きた蛇が穴中に曲りその腹の麟板が多処に鈎り着き居るを引き出すは難事と見え、『和漢三才図会』に、穴に入る蛇は、力士その尾を捉えて引くも出ず、煙草脂《タバコやに》を傅《つ》くれば出《い》づ。またいわく、その人左手自身の耳を捉え右手蛇を引かば出づ、その理を知らずといえり。この辺で今伝うるは、一人その尾を捉え他の一人その人を抱きて引けば出やすしと。
 十六世紀のレオ・アフリカヌスの『亜非利加記《デスクリプチョネ・デル・アフリカ》』第九篇には、沙漠産ズッブてふ大蜥蜴をアラブ人食用す。
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