皮たちまち堕ち去り丸裸となり、指端の爪を覩《み》て今更楽土の面白さを懐《おも》うても追い付かず。蛇もまた人祖堕落の時まで駱駝《らくだ》ごとき四脚を具え、人を除《の》けてはエデン境内最も美しい物じゃったが、禁果を偸《ぬす》み食った神罰たちまち至って、楽土諸樹木の四の枝が低《た》れ下り、四つの罪人永く追いやられ、アダムはヒンドスタンに、エヴァはジッダに、蛇はイスパハンに、エブリスはシムナーンに謫居《たっきょ》した。上帝蛇を悪《にく》むの余りその四脚を去り、永《とこし》えに地上を跂《は》い行かしむと。今の欧米人これを聞いたら笑うに極まっているが、実は臭い物身知らずで、彼らの奉ずる『聖書』にも十二世紀まではかかる異伝を載せあった由。
 日本でも釈迦死んで諸動物皆来り悲しみしに、蚯蚓《みみず》だけは失敬した故罰として足なしにされたというが、紀州には蛇の足に関する昔話あり、西牟婁郡水上てふ山村で聞いたは、トチワビキてふ蛙、昔日本になかったが、トチワの国より蛇に乗って渡り来る。報酬に脚を遣《や》ろうと約したに今以て履行せず、蛇恨んで出会うごとこの蛙を食うに、必ず脚より始むという。その蛙を検するに何処
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