ずやと、とにかくかようの水蛇と話が、羽州に存するは事実だとあった。これで古史の※[#「虫+礼のつくり」、第3水準1−91−50]や、今俗伝うる河童は、一種の水蛇より出たろうてふ拙見が、まず中《あた》ったというものだ。全体水蛇は尾が海蛇のように扁《ひら》たからず、また海蛇は陸で運動し得ず、皮を替えるに蜥蜴同然片々に裂け落ちるに、水蛇は陸にも上り行《ある》き全然《まるきり》皮を脱ぐ。もっともその鱗や眼や鼻孔等が、陸生の蛇と異なれど、殺した上でなければ確《しか》と判らず、したがって『本草啓蒙』『和漢三才図会』など、本邦にも水蛇ありと記せど、尋常陸生の蛇がたまたま水に入ったのか、水面を游ぐ蛇状の魚を見誤ったのか知りがたかったところ、黒井中将に教えられて、浅瀬を渡る水蛇が少なくとも本邦の北部に産すと知り得たるは、厚く御礼を申し上ぐるところである。
 海蛇の牙に大毒あるが、水蛇は人を咬《か》むも無害と、『大英百科全書』十一版二十五巻に見えるが、十二巻にはアフリカに大毒の水蛇ありと載せ居る。かほど正確を以て聞えた宝典も、巻|累《かさ》なればかかる記事の矛盾もありて読者を迷わす。終始一貫の説を述べ論を
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