川蛇、出羽にてトンヘビなどいえるものこれなり(熊楠故老に聞く、トンとは非道交会の義)と云々。さればこの蛇の害に依って水死せる者を、その肛門の常ならざるについて、皆|水虎《かっぱ》の業とはいい習わしたるものか云々。また女子の陰門《まえ》に蛇入りしといえるも、かの水蛇の事なるべし。かかれば田舎の婦女たりとも必ず水辺に尿する事なかれ、といいおる。予在英のうち本邦の水蛇について種々取り調べたが、台湾は別として本土に一種もあるらしくなかった。現住地田辺附近で、知人が水蛇らしいものを釣った事を聞くに、蛇らしくも魚らしくもあって定かならぬ。上述北国の水蛇は評判だけでも現存するや。諸君の高教を冀《こいねが》う。柳田君の『山島民譚集』に、河童の類語を夥しく蒐《あつ》めたが、水蛇については一言も為《さ》れ居ぬ。本篇の発端にも述べ懸けた通り、支那の竜蛟蜃など、蛇や※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]《がく》や大蜥蜴に基づいて出来た怪動物が常に河湖淵泉の主たり。時に人を魅し子を孕ます。日本の『霊異記』や『今昔物語』に、蛇女に婬して姙ませし話や、地方に伝うる河童が人の妻娘に通じて子を
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