へ吸い込む、かつて大きな野猪が、虎と噛み合うていたところを、大蛇がこの伝で呑んだといい、帽蛇に睥まれた蛙は、哀鳴してその口に飛び入り食わるというとある。ペンナントいわく、響尾蛇《ラトル・スネーク》、樹上の栗鼠を睨めば、栗鼠|遁《のが》れ能わず悲しみ鳴く、行人その声を聞いて、響尾蛇がそこに居ると知る(熊楠、米国南部で数回かかる事あった)。栗鼠は樹を走り、上りまた下り、また上り下る。一回は一回より増えて多く下る。この間蛇は、栗鼠を見詰めて他念なく、人これに近づくもよほど大きな音せねば逃げず、最後に栗鼠蛇の方へ跳び下りるを、待ってましたと頂戴《ちょうだい》しおわると。ル・ヴァーヤンも、親《みずか》ら鳥が四フィートばかり隔てて、蛇に覘《ねら》わるるを見しに、身体|痙攣《ひきつり》て動く能わず。傍人蛇を殺して鳥を救いしも、全く怖れたばかりで死にいた証拠には、その身を検《しら》べしに少しも疵《きず》なかった。また二ヤードほど距てて蛇に覘わるる鼠を見しに、痙攣《ひきつり》て大苦悩したが、蛇を追い去って見れば鼠は死にいたりと。米国のバートンこれを評して、世に事々《ことごと》しく蛇の魅力というは、蛇に覘
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