聞きて、舎利弗食べた物を吐き出し、一生馳走に招かれず布施を受けずと決心し常に乞食した。諸居士|何卒《なにとぞ》舎利弗が馳走を受けくれるよう仏から勧めて欲しいと言うと、仏|言《のたま》わく舎利弗の性もし受くれば必ず受けもし棄つれば必ず棄つ、過去世もまたしかりとて毒蛇だった時火で自殺した一件を説き種々の因縁を以て舎利弗を呵《しか》り、以後馳走に招かれたら上座の僧まず食いに掛からず、一同へあまねく行き届いたか見届けた後食うべしと定めたそうじゃ。而《しか》して件《くだん》の毒蛇を呪する法を舎伽羅呪《しゃがらじゅ》だと書き居る。そんなもの今もあるにや、一九一四年ボンベイ版エントホヴェンの『グジャラット民俗記《フォークロール・ノーツ》』一四二頁に或る術士は符※[#「竹かんむり/(金+碌のつくり)」、第3水準1−89−79]《ふろく》を以て人咬みし蛇を招致し、命じて創口《きずぐち》から毒を吸い出さしめて癒す。蛇咬を療ずる呪を心得た術士は蛇と同色の物を食わず産蓐《さんじょく》と経行中の女人に触れると呪が利かなくなる。しかる時は身を浄《きよ》め洗浴し、乳香の烟を吸いつつ呪を誦《ず》して呪の力を復すと見ゆ
前へ
次へ
全137ページ中29ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング