くその全話の根本じゃない。『記』に由って考うるに、この肥長比売は大物主神の子か孫で、この一件すなわち品地別命がかの神の告《つげ》により、出雲にかの神を斎《いつ》いだ宮へ詣でた時の事たり。上にも言った通り、この神の一族は蛇を族霊《トテム》としたから、この時も品地別命が肥長比売の膚に雕《え》り付けた蛇の族霊の標《しるし》か何かを見て、その部族を忌み逃げ出した事と思う。大物主神は素戔嗚尊《すさのおのみこと》が脚摩乳《あしなつち》手摩乳《てなつち》夫妻の女を娶《めと》って生んだ子とも裔《すえ》ともいう(『日本紀』一)。この夫妻の名をかく書いたは宛字《あてじ》で、『古事記』には足名椎手名椎に作る。既《はや》く論じた通り、上古の野椎ミツチなど、蛇の尊称らしきより推せば、足名椎手名椎は蛇の手足なきを号《な》としたので、この蛇神夫妻の女を悪蛇が奪いに来た。ところを尊が救うて妻とした「その跡で稲田|大蛇《おろち》を丸で呑み」さて産み出した子孫だから世々蛇を族霊としたはずである。
 予は清姫の話は何か拠るべき事実があったので、他の話に拠って建立された丸切《まるきり》の作り物と思わぬが、もし仏徒が基づく所あ
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