啖《く》いたいと連呼《よびつづ》けよと耳語《ささや》いて出で、竜を呼び込むと右の通りで竜大いに周章《あわ》て、袋を落し逃れた。途上狐に会って子細を話すと、痴《たわ》けた事を言いなさんな、ラザルスごとき頓知奇《とんちき》の忰《せがれ》が何で怖かろう、われらなどはあの家に二羽ある鶏を、昨夜一羽平らげ、只今また一羽|頂戴《ちょうだい》に罷《まか》り出るところだ、嘘と想うなら随《つ》いて来なせえといって、竜を自分の尾に括り付けてラの宅に近づく、ラこれを見て狐に向い、われ汝に竜を残らず伴《つ》れて来いと言ったに、一つしか伴れて来ぬかと呼ばわる。竜さては狐と共謀して、吾輩《われら》を食うつもりと合点し、急ぎ奔《はし》ると、※[#「てへん+曳」、第4水準2−13−5]《ひ》きずられた狐は途上の石で微塵《みじん》に砕けた。ラは最早《もはや》竜来る患《うれい》なければ、安心してかの袋の中の金で巨屋を立て、余生を安楽に暮したそうだ。竜をかかる愚鈍なものとしたのは、主として上述の川に落ちて死ぬほど、身重く動作緩慢なりなどいう方面から起っただろう。
一二一一年頃ジャーヴェ筆『皇上消閑録《オチア・インペリアー
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