プレート》』に、十六世紀に南米に行われた俗信に、※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]《がく》井中にあるを殺す唯一の法は鏡を示すにあり、しかる時彼自分の怖ろしき顔を見て死すとあるは、件《くだん》の説の焼き直しだろ。わが邦にも魔魅《まみ》、蝮蛇《まむし》等と眼を見合せばたちまち気を奪われて死すといい(『塵塚物語』三)、インドにも毒竜視るところことごとく破壊す(『毘奈耶雑事』九)など説かれた。フ氏曰く、竜は仮作動物で、普通に翼ありて火を吐く蜥蜴《とかげ》また蛇の巨大なものと。まずそうだが、東洋の竜が千差万別なるごとく、西洋の竜も記載一定せぬ、中世英国に行われたサー・デゴレの『武者修行賦』から、その一例を引かんに、ここに大悪竜あり、全身あまねく火と毒となり、喉|濶《ひろ》く牙大にしてこの騎士を撃たんと前《すす》む、両足獅のごとく尾不釣合に長く、首尾の間確かに二十二足生え、躯《み》酒樽に似て日に映じて赫耀《かくよう》たり、その眼光りて浄玻璃《じょうはり》かと怪しまれ、鱗硬くして鍮石《しんちゅう》を欺く、また馬様の頸《くび》もと頭を擡《もた》ぐるに大力を出す、口|気《い
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