、死後いずこへ往くか判らぬ、一切世界衆生の業力《ごうりき》に由《よ》りて成り、成っては壊《くず》れ、壊れては成り、始終相続いて断絶せぬ、それから竜が雨を降らすに、口よりも眼鼻耳よりも出さず、ただ竜に大神力ありて、あるいは喜びあるいは怒れば雨を降らす、この四をいうのじゃ(『大明三蔵法数』十一、十八)。
『正法念処経』にいわく、瞋痴多行《おこりどおし》の者、大海中に生まれて毒竜となり、共に瞋悩乱心毒を吐いて相害し、常に悪業を行う。竜が住む城の名は戯楽《けらく》、縦横三千|由旬《ゆじゅん》、竜王中に満つ、二種の竜王あり、一は法行といい世界を護る、二は非法行で世間を壊《やぶ》る、その城中なる法行王の住所は熱砂|雨《ふ》らず、非法行竜の住所は常に熱沙|雨《ふ》り、その頂あり、延《ひ》いて宮殿と眷属を焼き、全滅すればまた生じて不断苦しみを受く、法行竜王の住所は七宝の城郭七宝の色光あり、諸池水中衆花具足し、最上の飲食《おんじき》もて常に快楽し、妙衣厳飾|念《おも》うところ随意に皆あり、しかれどもその頂上常に竜蛇の頭あるを免れぬとある。今も竜王の像に、必ず竜が頭から背中へ噛《かじ》り付いたよう造るは、
前へ
次へ
全155ページ中41ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング