施のつくり」、138−7]《ぼうい》ちゅう人、山中で怪小児群が持てる金椎子《きんのつち》が何でも打ち出すを見、盗み帰り、所欲《のぞみのもの》撃つに随って弁じ、大富となった、しかるにその子孫戯れに狼の糞を打ち出せと求めた故、たちまち雷震して椎子を失うたと見ゆるなど、いずれも俵の底を叩いて、米が出やんだと同じく、心なき器什《どうぐ》も侮らるると瞋《いか》るてふ訓戒じゃ。
それから、竜神が秀郷に送った無尽蔵の巻絹の因《ちな》みに、やや似た事を記そう。ハクストハウセン(上に引いた書)がペルシアの俗談と書いたは、支那の伏羲|流寓《さすらえ》て、ある富んだ婦人に宿を求めると、卑蔑《さげすん》で断わられた。次に貧婦の小舎《こや》を敲《たた》くと、歓び入れてあるたけの飲食《おんじき》を施し、藁の床に臥さしめ、己は土上に坐し終夜眠らず、襦袢を作って与え、朝食せしめて村外れまで送った。伏羲嬉しさの余り、その婦に汝が朝手初めに懸った業は、※[#「日+甫」、第3水準1−85−29]《くれ》まで続くべしと祝うて去った。貧婦帰ってまず布を度《さ》し始めると、夕まで布尽きず、跡から跡から出続いたので、たちまち大富
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