しく剥《は》げたるを補うた功徳で、今生金の大小便ばかり垂れ散らす象を得たとあるが、どんな屁を放《ひ》ったか説いていない(『賢愚因縁経』十二)。
『今昔物語』六に、天竺《てんじく》の戒日王、玄奘三蔵に帰依して、種々の財を与うる中に一の鍋あり、入りたる物取るといえども尽きず、またその入る物食う人病なしと見えるが、芳賀博士の参攷本に類話も出処も見えず、予も『西域記』その他にかかる伝あるを知らぬ、当時支那から入った俗説じゃろう。ヒンズー教の『譚流朝海《カタ・サリット・サラガ》』に、一樵夫夜叉輩より瓶を得、これを持てばどんな飲食も望みのまま出来るが、破《わ》れればたちまち消え失せるはずだ、やや久しく独りで楽しんでいたが、ある夜友人を会し宴遊するに、例の瓶から何でも出《い》で来る嬉しさに堪えず、かの瓶を自分の肩に載せて踊ると、瓶落ち破れて、夜叉のもとへ帰り、樵夫以前より一層侘しく暮したと出《い》づ。アイスランドの伝説に、何でも出す磨《ひきうす》を試すとて塩を出せと望み挽くと、出すは出すは、磨動きやまず、塩乗船に充《み》ち溢《あふ》れて、ついにその人を沈めたとあり。『酉陽雑俎』に、新羅国の旁※[#「
前へ
次へ
全155ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング